筋肉をつけるためには、限界まで追い込むことが大切だ。
筋トレをしている人なら、一度は聞いたことがあるだろう。
そして実際、その通りである。
筋肉は快適な刺激では大きく成長しない。
限界に近づき、強い刺激が入った時にこそ、本当に成長し始める。
だが、ここで一つ思い返してみてほしい。
あなたのその「追い込み」は、本当に正しい追い込みだろうか。
ガムシャラになることは追い込むことではない
例えばアームカール。
セットの後半になり、筋肉が疲労してくる。
腕だけでは上がらなくなる。
すると多くの人はどうするか。
身体を大きく振り、腰を反らせ、反動を使う。
いわゆるチーティングだ。
もちろん、上級者が意図的に使うチーティングは別である。
だが多くの場合、それは単にフォームが崩れているだけだ。
そしてその時、頭の中はどうなっているだろうか。
おそらく真っ白だ。
顔だけが力み、重りを上げることしか考えられていない。
苦しさに支配されている。
そのような状態は本物の追い込みとは言えない。
ただガムシャラになっているだけである。
本物の追い込みはむしろ冷静だ
本当に追い込める人は違う。
トップボディビルダーのトレーニングを間近で見るとよくわかる。
― 確かに苦しそうだ
― 呼吸も荒いし、表情も険しい
― だが、フォームは崩れない
狙った筋肉への集中も切れない。
限界が近づくほど、むしろ意識は鋭くなる。
― どこに負荷が乗っているのか
― どこで力が逃げているのか
― どのように収縮させるのか
最後の一回まで考えている。
外から見れば必死に見える。
だが頭の中は驚くほど冷静だ。
本物の追い込みとは、理性を失うことではない。
むしろ逆である。
限界の中で、自分をコントロールし続けることなのだ。
一流は苦しい時ほどフォームを崩さない
マラソン選手もそうだ。
レース終盤は苦しい。
呼吸は乱れ、脚は鉛のように重くなる。
スタート時とゴール時では、表情は別人のようになっている。
だが、走り方は大きく変わらない。
水泳選手も同じだ。
酸素不足の中で泳ぎ続ける。
それでもフォームは維持する。
なぜか。
ガムシャラにやっても速くならないことを知っているからだ。
苦しい時ほど技術が必要になる。
苦しい時ほど自分を律する必要がある。
崩れそうになるフォームを、強い意志で抑え込んでいるのである。
苦しい時にこそ本性が出る
実は、人間の本性が最もよく表れるのは苦しい時だ。
余裕がある時は誰でも冷静でいられる。
誰でも丁寧にできる。
だが、追い込まれた時は違う。
― 焦る
― 雑になる
― 目先のことで必死になる
その瞬間にあなたの本性が試される。
目的を忘れて、ただガムシャラになるのか。
それとも目的を見失わずに、自分を制御し続けるのか。
本当に強い人は苦しい状況の中でも、自分を見失わない。
本物の追い込みとは、自分を支配することである
多くの人は追い込みを誤解している。
追い込みとは、感情を爆発させることではない。
気合いや根性だけで突っ走ることでもない。
本物の追い込みとは、限界の中で自分をコントロールし続けることだ。
― 苦しい
― 楽をしたい
― やめたい
そんな自分が顔を出す。
― それでもフォームを崩さない
― それでも目的を見失わない
― それでも集中を切らさない
本物の追い込みとは、重りとの戦いではない。
自分自身との戦いなのである。
